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素顔のベートーベン 音楽の革命家  ベートーベンの人間味を時空を超えて感じる喜び フィデリオ  ベートーベン生誕250周年企画 共同通信より2020年秋5回連載コラム No.4

ベートーベンの人間味を時空を超えて感じる喜び

 フィデリオ


現在、ウイーン旧市街地でベートーベンの住居として現存し、博物館として公開されているのがパスクバラティハウス。王宮に近く、周辺はその当時の国際的大都市をほうふつさせる、ふと襟を正したくなるような凛とした雰囲気がある。

ベートーベンは世界で初めてフリーランスとして生計を立てた作曲家だ。彼以前は教会や貴族の専属として注文される曲を書いていた。しかしベートーベンは好きな曲を書き、それらの楽譜を出版社に持ち込んだり、コンサートを企画したり、と現代さながら音楽ビジネスにも精力的に取り組んでいる。このパスクバラティハウスの前に立つと、そんなビジネスの話をするために気持ちを引き締めて早足に外出するベートーベンの後ろ姿がふと見えるような気がする。

ベートーベンは、彼の唯一のオペラ「フィデリオ」をここパスクバラティハウスで作曲した。このオペラは何度も書き直され、その度に新しい序曲が生まれた。最後に書いたものが「フィデリオ」の序曲として演奏されるのが常だ。

冒頭は、タンタタン、タンタタン、タンタタンタンタン!と歯切れ良く始まる。この部分はオペラ自体には登場しないモチーフだが、華やかで開幕になんともふさわしい。こんなところからも、作曲の際に相当熟慮したベートーベンの心意気を感じることができる。

序曲の後は、崇高な愛、ドロドロした欲望、壮大な合唱シーンといった人間ドラマが待っている。それらをこれでもかというほどの音楽的深さと多様性で表現するベートーベンの手腕には、ただただ脱帽だ。

芸術家たる熱情とビジネスマン的計算高さが共にプンプンにおう、この「フィデリオ」。ベートーベンの人柄を丸ごと体感できるそんな作品である。


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